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正しい叱り方

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「正しい」などと銘打つのはおこがましいかも知れません。よく内容を読んだ上でご自身の判断で本当に「正しい」のかどうか見極めてください。

1、感情的にならない

「ばかやろう!」と怒鳴られて素直に、「自分が悪かったな」と反省できる人間はまずいません。大抵の人間は怒鳴られた――感情的に怒られた――時点で反抗心が芽生えてしまいます。一度反抗心が産まれてしまえばその後の説教には何の意味もありません。どんなに良い言葉を怒鳴った後に言ったとしても相手の心に届く途中でカットされてしまいます。(相手は既にあなたの話を聞くつもりなどない。単にあなたの怒りが収まるのを待つだけになってしまう。)ですので自分の憂さ晴らしのためではなく、本当に相手を正したいと思うのであれば相手が反抗心を持たないように叱ることが重要です。

相手を叱ると言う事は少なからず自分は相手に対して怒りを抱いているということです。しかし前述の通りそこで怒りにまかせて相手を怒鳴ってしまっては、両者の間によほどの信頼関係が無い限り相手を反抗的にするだけで何の意味もありません。(逆に言えば強い信頼関係があるのならば多少の無茶も問題ではないのですが。)

相手のためを思って言う言葉でも相手が聞く耳持たずでは何の意味もありません。まず相手に話を聞かせる、聞いてもらうことが重要ですので反抗心を持たせない話し方――感情的にならず、あくまで冷静に話すこと――が必要です。

怒りが爆発しそうな状態で冷静に話をすることなどできない、と言う場合もあるかも知れません。しかしその状態で相手を叱ってもそれは相手の自分に対する不信感を強めるだけであり、単なるあなたの鬱憤晴らしに過ぎなくなってしまいます。叱る側には自分の感情をコントロールするという高度なテクニックも必要になってくるのです。

無論、会社において(日本では私生活においてもなのかもしれませんが)上司の言葉は絶対ですので、怒られた側(部下)も素直に受けるしかありません。しかしその「素直に」と言うのがなかなかできないのが人間というものです。もしあなたが部下を持ち、どうしてもこれだけは聞いてほしい、と思うことがあるのならば相応の方法をとるべきです。

2、欠点をいくつも並べない

よく相手の「ここが悪い」「あれが悪い」と延々と悪い点を挙げる人がいます。本人は相手に悪い所を気づかせてあげようと思っているのでしょうが、言われる側にしてみれば「もういい加減にしてくれ」と言ったところでしょう。

叱られる側にそんなにも欠点が多いのが悪いと言う方もいるかも知れませんが、総じて人間に欠点はつきものです。あなた本人が気づいていないだけで、あなたをよく知る友人ならば5個や6個の欠点くらいぱっと思いつくことでしょう。それを延々と言われたらあなたはどんな気持ちになりますか。「自分が悪いのは分かったからもうやめてくれ」と言いたくなるのではないでしょうか。

はっきり言って相手の欠点をいくつも並べるのは単なる侮辱です。言われる側も1個や2個ならば「自分にはそんな欠点があるのか」と自らを戒めることにも繋がりますが、5個にもなれば聞くのにうんざりしてきます。

そして最大の問題がこの時欠点を言っている側が大抵それを楽しんでしまっていることです。言っているうちに面白くなってきて、本来言うつもりの無かった本音まで言ってしまい友人関係が壊れてしまうこともあるかもしれません。

欠点を指摘するならば多くても一度に1つか2つ。それも本来は好ましいものではありません。欠点と言うのは大抵直そうとしても本人の意志ではなかなか直せないものです。欠点も一つの個性ですのでそれを変えろという方が難しいでしょう。そして指摘された相手がその欠点を気にするあまり、鬱的になってしまう可能性もあります。言う方は気軽に言ったつもりでも、思った以上に相手を傷つけてしまうことがあるのです。

3、相手に自分で自分の非を気づかせる

これは相当に高度なテクニックだと思われます。相手に「これこれこういうことが悪い」と言うのは簡単です。しかしそれでは相手は「ああ、そうなのか」で終わってしまい、その件については改善されるでしょうが他のことについての応用が利きません。

たとえば教室でサッカーをして花瓶を割ってしまった男の子がいるとします。その子に対して「教室でサッカーをしてはいけません」と言うのは簡単です。しかしそれでは今度その子は教室でラグビーを始めるかもしれません。あるいは廊下でサッカーをするかもしれません。これは極端な例ですが「教室でサッカーをしてはいけません」という言葉だけ捉えれば男の子のとった行動はなんら不思議なものでは無いのです。

ここで男の子が花瓶を割ってしまった時に先のテクニックを使うとこうなります。まず「どうして怒られるかわかる?」と問いただします。この時必ず男の子自身に答えさせることが重要です。以下「どうして教室でサッカーをしてはいけないんだと思う?」「教室でサッカーをする代わりにどうすればよかったと思う?」と質問して行きます。男の子は自ら考え答えを出します。その答えは、教室でサッカーをする、という行為だけに対する答えではないはずです。今や男の子は何が悪かったのかはっきりと分かっています。もう教室でラグビーをすることも、廊下でテニスをすることも無いでしょう。男の子は自分で善悪を判断すると言うことを学んだのです。

この手法では質問者がいかに適切な質問をかけられるかと言う事が重要になります。しかし質問さえうまくいけば後は考えるのは叱られている側ですので質問者は気が楽かも知れません。それでもたまに突拍子も無い解答をすることがあるかも知れないので気を抜くべきではありません。

このテクニックは「叱る」というよりもむしろ「教育」に近いところがあります。通常「叱る」という行為は叱る側から叱られる側への一方通行です。対してこのテクニックでは主体はむしろ叱られる側にあります。叱られる側に自分で考えさせる事で善悪の判断能力をつけさせるというのがこの目的でもあるのです。

またこれは普通に一発怒鳴るのに比べて非常に時間がかかりますので、時間を惜しまない親子間や時間を使ってでもどうしてもきちんと教えておきたいことがある場合など、おのおのの判断の上でお使いください。

上記をまとめると、あくまで冷静に自分は多くを語らず相手自身に何が悪かったのかを考えさせる、となります。

無論これは全ての場合にあてはまるわけではありません。時にはどかんと一発怒鳴った方が良い場合もあるでしょう。しかし、多くの場合にこの方法論はあてはまるはずです。怒鳴るか、冷静にいくかの判断は叱る側の経験によって養われていくことでしょう。これを読んだあなたが「叱り上手」になることを祈っています。

正しい叱られ方

上に書いた内容は正しい叱り方であると同時に正しい叱られ方でもあると言えます。

相手が感情的になった時はすぐさま反感を抱くのではなく、感情的で支離滅裂になりかけている相手の言葉の中から自分のためになる言葉を見つけようとする努力が必要です。

欠点をいくつも並べるような相手に嫌気を感じるのではなく、自らの欠点を発見し改善に努める努力が必要です。無論、欠点にのみとらわれるべきではありません。変えようがないのならそれでいいのです。それは変えようが無いほどに自らに根付いた大切な個性の一つなのですから。

相手に怒られた時はいつも「どうして怒られたのか?」「何が悪かったのか?」を自分で自分に問いただすことが重要です。これによって普段は気づかなかった新たな発見をすることができるでしょう。

あなたを叱る人間はみんなあなたのためを思って叱るのです。確かに稀に自分の憂さを晴らすためだけになりふり構わず人を叱る人間もいるかも知れませんが、それでもその言葉の中にはたくさんの嘘と共に大切な真実が混じっているはずです。

叱られるのは当然気分の良いものではありません。それでもそこから自分のためになる何かを見つけようという気持ちがあるのならそれは決して無意味なものでは無いのです。

言うまでもない事ですが言い訳、反論は絶対にすべきではありません。それらは全てあなたの評価を下げる事にしか繋がりません。もし、どうしても理由を述べたいのであれば相手が近づいてきたと思ったら先手を打って先に自分から謝っておきましょう。上司が近づいてくるのが見えたら「課長、昨日は○○のために△△してしまい申し訳ありませんでした。」と言うように。怒られてからでは何を言っても言い訳にしかなりません。ただし、その後で自分の悪かった点をきちんと反省しておくこと、これが大事です。